トランギアの製品はどれもシンプルで実用的な機能美溢れる製品ばかり。
その中でも代表的な製品はアルコールバーナー、ストームクッカー、メスティン、ケトルなど。
バーナーとしては、アルコールバーナー、ガスバーナー、ジェルバーナーなどがあるがやはりその中でも最も存在感のあるのはアルコールバーナー。
クッカーやコッヘルと呼ばれる調理器具のセットにはいくつかあるがコンパクトにスタッキング可能なストームクッカーは1951年以来基本的な構造を変えていないロングセラー。
アルコールバーナーでもご飯が炊けるメスティンは、小物入れにもなり、収納時にも収まりが良いのでハイカーや登山者にも支持される飯ごう。
そしてケトルは、シンプルかつ注ぎやすさも高評価だが、何よりストームクッカーに追加で一緒に収納できる便利さを兼ね備えている。
まずはこれらの機能美溢れる各製品に関する基本情報を解説。
トランギアのアルコールバーナーは、ほぼメンテナンスの必要もないシンプルな構造で旅に十分な火力が特徴の調理器具。
呼び名としては、アルコールバーナー、アルコールストーブ、スピリットバーナーなどと呼ばれるが、どれも同じものを指している。 また、TR-B25と言う型番からB25とも呼ばれている。
ちなみに、スウェーデンの本家サイトでは、Spirit burner(スピリットバーナー)、国内のイワタニプリムスのサイトではアルコールバーナーと記載されている。
炎はアルコールランプのようなものをイメージするかもしれないが、ゆらゆらした雰囲気とはちょっと異なる。 アルコールバーナーは点火後しばらく経つとタンク内の燃料が温められ、気化したアルコールが燃焼し、火口からの炎は力強いものになるような構造となっているのが特徴。
使えばわかるが、バーナーというだけあって、立ち上がる炎はかなり力強く、空気の流れを活かして効率的に燃焼している様子がわかる。
さらにストームクッカーなど空気の流れを制御する構造の製品と組み合わせることでバーナーの効率を、最大化させるとのこと。
アルコールバーナーは、低温に強いため、秋、冬のキャンプシーンでも気軽に使うことができる。
風などにも比較的強く、風が吹いてもせいぜい火が消える程度なので安全に使用できるが、転倒などにより燃料漏れの危険はあるので、テント内などでの使用は絶対に避けた方が良い。
また、万が一の場合に備えて濡れタオルなどの用意を心がけてほしい。
一方、ガスバーナーは強風下で利用するときには注意が必要。炎が長く伸びて周囲に引火などの恐れがあり非常に危険。
アルコールバーナーにせよ、ガスバーナーにせよ、換気の良い、引火性のもの、燃えやすい衣類などが近くにない場所で使うのが鉄則である。
燃料はエタノール(エチルアルコール)とメタノール(メチルアルコール)が使用可能だが一般的な燃料用アルコールでは、メタノール主体のものが多く、混合のものでも、95%程度がメタノール、5%程度エタノールが入ったものが多い。 もちろんメタノールは飲用 は厳禁。
燃料用アルコールは、カセットボンベ(CB缶)に次いで入手が容易な燃料になる。 食品メインのスーパーなどではないかもしれないが、薬局などでは結構置いているところが多い。
使い方は容器にアルコールを入れて、そのまま火をつけるだけ。消すときは蓋を閉めて空気を遮断する。
出力は1000wとのことで、イワタニのその他のガスバーナーなどが2000w〜4000wぐらいとのことなので少し控え目な火力。
容器にアルコールを2/3ほど入れて燃焼時間は約25分ぐらい。1回の調理にちょうど良い。大雑把に燃料の分量を調整して自動調理のように使うことも容易である。
ちなみにバーナー単体では上にクッカーを据えることもできないので小型の五徳やストームクッカーなどと組み合わせて利用する。(ストームクッカーにはアルコールバーナーも付属しているのでご注意ください。)
五徳も付いていないような、このシンプルさは返って、周辺パーツと組み合わせることで多くの人のニーズを満たすこととなっている。
燃料は薬局などで販売されている燃焼用アルコール。とても安価で入手も容易なのが良い。
一回だけの使用ならアルコールを詰めた状態で携行してもいいがアルコール漏れや複数回使用が気になるならフューエルボトルを持っていると便利。
謝ってアルコールをこぼしたり、想定外のことが起こるのがアウトドアなので、予備の燃料を運ぶためにもフューエルボトルを手に入れておくことをお勧めする。
使用燃料はメチルアルコールまたはエチルアルコールで、薬局等で配合された燃焼用アルコールを購入すれば問題ない。
1951年に最初のプロトタイプ以来基本的な構造は変わらず、細かな改良が施されてきたというトランギアの代表的なプロダクト。
本家(スウェーデン)のサイトではCamping stoves seriesと呼ばれているが、なぜか日本ではストームクッカーという名前。
クッカー(コッヘル)、アルコールバーナー、五徳兼風除け、クッカーのハンドルのバランスの良いセット。
世の中のクッカーやコッヘルには主に、アルミニウム、チタン、ステンレスなどがあるが、トランギアのクッカーはアルミニウム製にあたる。ストームクッカーのクッカーもいくつかの表面加工はあるがアルミ製となる。
アルミ製のクッカーはステンレスなどに比べて熱伝導率が高く、軽量であることが特徴。ステンレスなどのクッカーでは、熱伝導率が低く、バーナーの当たった一部だけが焦げ付くなどの問題があるが、アルミ製のクッカーでは熱伝導率の高さにより熱を均等に行き渡らせることができ、焦げ付きを抑えることができる。
クッカーとしては、フライパンと二種類のサイズのソースパンが付属しており、煮炊きと焼きが別々に行なうに十分なセットとなっている。
これらのセットが全てひとまとめにスタッキング可能となっており、非常にコンパクトに収納できるのが特徴。
サイズはソロ向けのSサイズと、2〜3人向けのLサイズの二種類をラインナップ。
これらのセットにはケトルまで同じスタッキングに加えることが出来る。
Sサイズには0.6リットルサイズのケトル(別売)がソースパンの中に収納可能。また、Lサイズには0.9リットルサイズのケトル(別売)がソースパンの中に収納可能。
いずれもその際、アルコールバーナーは燃料を使い切ってケトルの中に収納する。
セットで一度に購入するとそれなりの出費に感じるが、スタッキング可能な調理器具をバラバラで購入すると返って不要なものが増えたり、トータル出費がかさんだりすることが予想される。
ちょうど良いフライパン、2つのソースパン、ケトル、バーナー、五徳を揃えるのはなかなか現実的ではない。
かなり洗練されたクッカーセットである。
材質や仕上げとして、アルミ無垢のウルトラライト、ハードアノダイズド、ブラックバージョンの三種類をラインナップしていたが、2018年からデュオーサルというシリーズが発売されて四種類となっている。
ハードアノダイズドが最も高価で、ウルトラライト、ブラックバージョンハードアノダイズド、デュオーサル、ハードアノダイズドと順で値段が上がっていく。
ハードアノダイズドバージョンはウルトラライトにハードアノダイズド加工を施したもの。ハードアノダイズド加工とは、硬質アルマイト加工といい、腐食に強く、長く愛用したい人に向いている。
デュオーサルシリーズは、熱伝導率の高いアルミを外側に、耐久性の高いステンレスを内側に使用したフライパンとソースパンを組み合わせたバージョンでアルミニウムとステンレスのいいとこ取りをしている。気になる製品である。
ブラックバージョンはウルトラライトに黒色コーティングしたものとなるが、コーティングが剥げるというユーザーも聞かれる。
ブラックバージョンでは、ソースパンとフライパンの両方の内側にノンスティック加工が施されている。
また、ウルトラライトとハードアノダイズドでは、フライパンのみ内側にノンスティック加工が施されているという違いがある。
フライパンは比較的焦げ付くような使い方が多いのでいずれもノンスティック加工が施されているが、ソースパンまでノンスティック加工がされているのは、ブラックのみとなっているので注意が必要。
ノンスティック加工とはいわゆるテフロン加工のことで焦げ付きを防ぎ、洗浄を容易にしてくれる。
一方でこういったノンスティック加工やコーティングには注意点がいくつかある。初めて使うときにこれを知らないと手遅れとなることもあるので知っておくべき。
まずコーティングやノンスティック加工は、金属ヘラや金タワシなどによるキズに弱いのでハードな扱いには向いていない。
さらによくやってしまいそうなのが、空焚きや空焚きに近い状態により、アツアツに熱している状態では塗装剥がれが発生しやすくなるので注意が必要。ソーセージなどを空焚き状態で4~5分程炒めた後にアルミハンドルでフライパンをつかむと、それだけでその時の高温の影響で塗装面の熱分解が発生する。その結果、ハンドルでつかんだ痕が塗装はがれに繋がるとのこと。
次に空焚きや空焚きに近い状態などによりテフロンが揮発してしまい、著しく焦げ付き防止性能が低下するので取り扱いに注意が必要となる。
空焚きに近い状態については、フライパンで少量のソーセージを炒めるとか、アルミホイルをフライパンの上に乗せての調理などが公式では推奨しない使い方とされている。
ラインナップとして、トランギア社の90周年記念モデルとしてレッドリミテッドエディションというものもあり鮮やかなデザインで、興味深い製品だが、ここでは割愛する。
トランギアのケトルも長い歴史を持ち、知る人ぞ知る逸品的なプロダクト。
素材はアルミ無垢のみ。トランギアのアルミニウム無垢の製品はバリに注意というのはご多聞に漏れず。このケトルも気になる人はサンドペーパーでバリ取りをしておくと良い。
サイズは1.4リットル、0.9リットルと0.6リットルの三種類というラインナップ。
0.6リットルと0.9リットルのものは、背が低く可愛らしいデザイン。このサイズ、形状はストームクッカーに収納されることも想定されており、ストームクッカーのLサイズは0.9リットルのケトル、Sサイズのストームクッカーは0.6リットルのケトルを一緒に収納可能となっている。
1.4リットルのものは、やや背が高く、ストームクッカーに収まるサイズではないので、なかなか一般的に見かけることは少ないと思われる。店頭などでは見かけたこともない。
また、本国スウェーデンのサイトではこれに加え、1.0リットルのモデルやハンドルタイプのものも存在する。ハンドルタイプは0.9リットルで、取り外しが可能なハンドルタイプと据え付けのハンドルタイプの二種類が存在するようである。
当然ストームクッカーには収納出来ないことを理解しておく必要があるが、トランギアのケトルはとにかくデザインが秀逸なので、人とは違うアイテムを求める方には良いかもしれない。
本題に戻り、0.9リットルのケトルで注ぎ口ギリギリまで水を入れると、確かに0.9リットル入るが、沸騰して吹き出すぐらいギリギリになってしまう。実際には肩の部分まで入れるぐらいがちょうどよく、その時の容量が約0.7リットルぐらいだと思っておいた方が良い。
日清のホームページによると通常サイズのカップヌードルで、必要なお湯の目安は300ml、キングだと520mlとのこと。
また、尾西食品のホームページによるとアルファ米に必要なお湯の目安は、うるち米製品で160ml、おこわ製品で110mlとのこと。
製品名 | 必要なお湯の量 |
---|---|
カップヌードル | 300ml |
キングカップヌードル | 520ml |
尾西食品 アルファ米(うるち米製品) | 160ml |
尾西食品 アルファ米(おこわ) | 110ml |
注ぎ口は液だれを起こさず、狙ったところにチョロチョロと注ぐような調整がしやすい。特に山頂や寒い時期、場所でのコーヒーを入れるのに最適と評価が高い。
取っ手は近年改良され、ラバー部分の取り外しが出来る。(以前のものは取り外しができなかった。)
注意点は他のアルミ製品同様、空焚き厳禁ぐらい。それさえ気をつければ、最初のうちは丁寧に扱ったりするかもしれないが、正直ガシガシ使って味を出すような種類のグッズではないかと思う。
アルミ製品なので変色等を気にする人は、皮膜を作るために、米のとぎ汁で煮沸するというのはある。この辺りはトランギアの注意書きにもあり試したが、正直、気休め程度。
メスティンもまたトランギアの代表的なプロダクトでこれも根強いファンが多数存在する。
メスティン(messtin)とは主に軍での携帯食器のこと。飯ごうを意味する。元々の意味がMess=食事、Tin=缶から来ているらしい。本来は兵士が野戦などの際に食料を入れて携行したり、食事の配給を受けるのに用いる食器というのが主な用途だが、非常時には調理器具やバケツなどとしても用いられていたとのこと。 飯ごうというとキドニー(肝臓)型(=そら豆型)と呼ばれるものが真っ先にイメージされるが、トランギアのメスティンはクッカーには珍しく四角く角ばった形が特徴で見た目は長方形の弁当箱のような形状。
丸いクッカーなどと比べて四角い形状はバッグにも収まりが良く、メスティンの中に、アルコールバーナーと五徳、スプーンなどを入れてミニマム装備とするミニマリストもいるほど。 一方で、ストームクッカーなどの五徳が使えないのは微妙に残念な気がする。
サイズはメスティンTR-210とラージメスティンTR-209の二種類がある。カラー、材質はアルミ無垢のラインナップのみ。
新品のメスティンは、フチの部分に必ずといって良いほどバリがあり、食事の際に口を切ったり、洗い流すときに手を切ったりするので、必ず紙やすりなどでバリ取りを行なう。 メーカーも改善してくれても良い様なものだが、コストの関係か、そこがメスティンらしさなのか大昔から変わらないらしい。バリなどを理由に交換して貰うのもおそらく余計な手間。メスティンのファンには、このバリ取りは、あくまでも儀式という話もあるほど一般的な話の様である。
ただでさえメンテナンスの少ないトランギア製品だからこそ、最初のひと手間はユーザーに愛着を持たせるために必要な演出かもしれない。