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アルコールバーナー(アルコールストーブ)を使用前に必ず知っておきたい(知らないと後悔するかも)な事項について紹介する。

ここで伝えることは、主にアルコールの周囲への飛散、引火、アルコールの炎の見えにくさに関する危険性を理解し、継ぎ足しや故障したバーナー仕様の禁止、周囲に燃えやすいものを絶対に置かないという一般的だが非常に重要な注意事項である。

即火災につながることでもあるので、これらをよく理解してアルコールバーナーでのアウトドア料理を楽しんでほしい。

2段階で燃えるアルコールバーナーの動作を理解しておく

アルコールバーナーは、メタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)、プロパノールといった低級アルコールを燃料とする。 これらを燃料とするアルコールバーナーの炎は、点火直後はとても弱い。これは、バーナー自体が過熱され、理科の実験でアルコールランプを使ったことのある方は、ろうそくより少し大きいぐらいの、淡い炎をイメージできると思うが、アルコールバーナーの点火直後はそのような状態である。器状のアルコール溜まりにふわふわと炎が揺れる程度で、とても火力も弱く、このままではお湯を沸かすにも相当時間がかかりそうな印象である。

アルコールストーブ点火直後

しかし、アルコールバーナーは、バーナー自体が熱を持ってくると、アルコールの気化が加速され、より火力が上がってくる。(ただし、少しずつ熱をもって、少しずつ、火力が上がってくるというのではない。)ある程度過熱されると急に「ポッ」という軽い破裂音をきっかけに、バーナーのフチにある穴から噴き出したアルコールに点火して、本格燃焼に移行する。

最初に炎が弱いのは故障でも何でもないので、少し、待ってもらえば十分な火力が得られる。初めて使う人は、念のため、周囲に燃えるもののない、風の吹かない場所で、数分間燃焼をさせて、一度着火テストをして、どんな挙動をするのか経験しておくことを強くお勧めする。

アルコールの炎は見えにくい

何度か使ってしまえば、「こんなもんかな」という感覚を覚えてもらえる話だと思うので、そこそこ心配は不要であるが、アルコールの炎は見えにくいということは知っておいてほしい。

インディーカーなどのアルコール燃料によるレースなどでご存じの方もいるかもしれないが、アルコールの炎はとても見えにくい。アルコール燃料の炎は淡い青色や淡い黄色で、アウトドアにおける昼間のような明るい場所ではほとんど見えないという特徴があることを知識として知っておいてほしい。ガスバーナーやガソリンバーナーのような、音と熱、視覚的に点火が確認できるとは限らない。(故障でも何でもない。静かさも含めてアルコールバーナーの良さでもある)

特に着火直後は、炎も弱く、炎の上に手をかざしてみると温かみを感じることはできる程度で、なんとも心もとない熱量である。そのうえ、風の影響などがある場合は、本格燃焼に入る前は上に手をかざしても熱量を感じないこともある。点火していることがわかりにくく、注意して確認しなければならないことをよく理解しておいてほしい。

燃えやすいもののそば、テントの中などで絶対に使わない。

まず何よりも先に注意喚起するべきだと思う。アルコールストーブに限らず、バーナーはちょっと当たって倒れるといったことが起こり得る。特にアルコールバーナーは倒れるまで行かなくてもアルコールが周りに飛び散ることがある。 狭いテント内の衣類や寝袋に引火すると甚大な被害と命の危険もあるので絶対に避けたい。

消火用の濡れタオル等を必ず用意しよう。

密閉された空間で使用しない

小さいテント内などでの使用に関する注意点として、もう1つ、一酸化炭素中毒の問題がある。特に小さなテントの中では十分に換気をしなければ、一酸化炭素濃度の上昇の危険性が高くなりやすい。火災の危険性もあるので、いずれにせよテント内でバーナーの使用は避けたい。

点火中のアルコール継ぎ足しは厳禁

アルコールバーナーは、一度満タンにすると、30分ぐらいは過熱ができるので、ほとんどの場合は、一度の補充と着火で何とかなる。しかし、続けて料理を作るといった場合には、やはり途中でアルコールが切れてしまうこともあり、アルコールの継ぎ足しというのは発生する。

ここで問題になるのは、炎が見えないことにより、「点火していない。」、「消火している。」と誤認することである。

アルコールは火力こそは、そこまで強くなく、ガソリンのように爆発などの危険性は低い燃料である。ただし、引火性は、非常に高いので注意が必要である。着火したままのアルコールバーナーにタンクなどから継ぎ足しは、ほぼ確実に引火するので絶対にやってはいけない。

「確実にバーナーの炎が消えていることを確認してからアルコールの継ぎ足しを行うこと」

より慎重に扱うなら、バーナー自体が十分冷えていることを確認してから継ぎ足しをするようにすべきである。

アルコールの周囲への飛散

アルコールは飛散する。バーナーの転倒はもちろん、調理中にストームクッカーを移動させるなどの行為も危険である。それ以外にも、アルコールの補充の際にアルコール容器から漏れたものが周囲に付着しているという可能性もある。幸いにもアルコールはすぐに蒸発するので、周囲に付着したアルコールがないかをよく確認して、蒸発するのを待ってから使用してほし。蒸発したアルコールはこれも引火の原因になるので、換気も意識してほしい。

破損したバーナーは絶対に使用しない

飛散と共通するが、破損したバーナーはアルコール漏れ、周囲への燃料の広がり、引火ということに直結する。 下の写真は、trangiaのアルコールストーブではなく、他社の安価なアルコールストーブであるが、長年の使用で、フチの一部が破損している。アルコールストーブの破損個所は主に、このフチの部分と、上部の火口周辺の割れである。下の写真の破損の場合は、当時、気づかずに使っていたので、破損部からアルコールが漏れ出して、テーブルの上で引火してしまった。幸い大事には至らなかったが、気づかずに放置していたら確実に火災につながっていた。

他社アルコールストーブの破損

密閉用キャップはアルコールバーナーが十分冷めてから

密閉用キャップを占める際には、アルコールバーナーが十分冷めてからおこなうこと。

アルコールバーナーには火力調節用の蓋とOリングがセットされた密閉用のキャップがある。高温の状態はOリングの劣化を早めるのはもちろんのこと、ある程度冷めていても、しっかりキャップを占めてしまうと、本体の温度低下によって、密閉された内圧が下がり、バーナーに負荷がかかる。一度や二度で割れることはないが、長期間の使用では、バーナーの溶接部分にかかった負荷が寿命を縮めると言われている。

アルコールが残ったままで保管しない

密閉用キャップのOリングの劣化などもあるが、密閉キャップをそれほど信用しないほうが良い。アルコールは有機溶媒でもあるので、バックパックの中でアルコールが漏れた場合、バッグ内の衣類、アウトドアグッズの変色や変形につながる可能性もある。(もちろん火災の危険も)



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